ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
こうして手を繋いでいれば、ぜったいぜったいたどり着ける。
気づいたときには、たどり着いてる。
あ、ここがその世界だったんだ…って、ふとしたときに思うんだよ。
幸せってね、その原理で作られてるの。
「李衣、もう少し一緒にいたい。…帰りたくない」
「…うん。私も」
ブーッ、ブーッ。ブーッ、ブーッ。
何度も何度も聞こえてくるマナーモード。
「出なくていいの?」と聞くと「うん」って返ってくるから、今はもう聞こえないふりをしていた。
「───ちはや!!」
それはパンケーキ屋さんのあとに立ち寄ったショッピングモールから出て駅前のロータリー、手を繋いでゆっくり歩いていたときだった。
周りの目を気にすることなく大音量で呼ばれた名前と、地面を叩くように足音を響かせながら近づいてくる音。
「こんなところで何をやってるの…っ!!」
「……母さん、」
「こんなに暗くなるまで…っ、電話にも出ないしっ、どこかで転んだらどうするのよ…!!」
お母さん……?
このひとは千隼くんのお母さんなの…?