ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
コンサルタントをしている父親が、なんとも情けなく見えた。
仕事を抜け出してまで慌てて来てくれたんだろうけど、こんな姿を見るくらいなら来なくて良かったと思ってしまう。
『な、治るん…ですよね…?』
それは誰もが思うことだ。
もう結果だけでいいくらいに。
とりあえず治ると言ってくれ───と。
『…これは進行性の病気です。薬はあっても、“遅らせる”だけで“消える”わけではありません。指定難病に登録されているひとつです』
“青石 航平”
あおいし、青石……。
淡々と説明する医者の白衣につけられた名札の文字を、俺は何度も頭のなかで繰り返していた。
『で、でもまだ疑いの段階ですから…、そうではない場合も…』
『初期症状に近い症状も出ていますし、なによりこの病気はほとんどが遺伝性です。
ご親族の方にそのような疾患を持っていた方などはいらっしゃいませんか?』
言葉を飲み込むように黙ってしまった両親。
いまだに状況を把握できていないのもあるんだろうけど、先生の質問に思い当たる節があったんだろう。
息が詰まるような重苦しい空気のなか、父さんは意を決したように口を開いた。