ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「ずっと見てられるっていうか…、あ、変な意味じゃないよ…?
たとえば動いてなくても美しいっていうか、座ってるだけで十分っていうか、…わかる?」


「……わかるようで微妙」


「とりあえずっ、浅倉くんは特別枠!私がお近づきしていい人間ではありませんってこと!」



あまり喋っているところを見たことがないから、どんな声をしてるんだろうって気になる。

いつもイヤホンをしてるから、なにを聴いてるの?って気になる。


けれど遠くから眺めているだけで心が洗われてしまう存在、それが浅倉 千隼(あさくら ちはや)だ。


きっと彼はすごくきれいな世界を見ているんだろう。



「…なるほどねえ。でもさ、浅倉はちょっと残念なとこあるよね」


「えっ、残念…?どこが…?」


「ほら、たまに転ぶじゃん。たぶん運動できないタイプなのよ」



言われてみれば……。


とくに体育の授業のとき。

そこで転ぶ?なんて場面でドテッと、わりと痛々しいくらい豪快に転んでいたような。



「……でもそれめちゃくちゃ可愛くない…!?」



< 12 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop