ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「ずっと見てられるっていうか…、あ、変な意味じゃないよ…?
たとえば動いてなくても美しいっていうか、座ってるだけで十分っていうか、…わかる?」
「……わかるようで微妙」
「とりあえずっ、浅倉くんは特別枠!私がお近づきしていい人間ではありませんってこと!」
あまり喋っているところを見たことがないから、どんな声をしてるんだろうって気になる。
いつもイヤホンをしてるから、なにを聴いてるの?って気になる。
けれど遠くから眺めているだけで心が洗われてしまう存在、それが浅倉 千隼(あさくら ちはや)だ。
きっと彼はすごくきれいな世界を見ているんだろう。
「…なるほどねえ。でもさ、浅倉はちょっと残念なとこあるよね」
「えっ、残念…?どこが…?」
「ほら、たまに転ぶじゃん。たぶん運動できないタイプなのよ」
言われてみれば……。
とくに体育の授業のとき。
そこで転ぶ?なんて場面でドテッと、わりと痛々しいくらい豪快に転んでいたような。
「……でもそれめちゃくちゃ可愛くない…!?」