ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




『個人差が激しい病気だと先ほど言いましたように、進行が急に停止する場合もあるんです。ごく一般的な寿命まで生きたというケースもあります』



だからなに。

その人は、その人ってだけだよ。
俺は俺なんだから。

停止したとしても治るわけじゃない。


希望あるケースを紹介されたところで俺がSMAなのは変わらないし、自分の身体がこれからいつどうなっていくのか予測すらできない。


その恐怖が先生、あんたに分かるの。



『できるだけタンパク質をたくさん摂取してください。こちらも今日から薬を処方させていただきます。
これから手足の震えが生じたり、躓いたり転けたりすることが増えていくかと思いますが、こうして早期発見に至ったので着実な対応をしていきましょう』



ずっと気づかないまま過ごしていたパターンの患者も、なかには居るらしい。

何十年と経って身体が動かなくなってからやっとSMAと診断されたのだと。


それくらい本当に、人それぞれの病気。


薬の種類、今後行われるリハビリの説明、通院スケジュールの具体的な例。

着々と進んでいく会話に追いつけていないのは、患った本人と、その家族だった。



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