ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
なんでこんなやつが生きてて、俺にはあんな絶望が待ってるんだよ。
不公平すぎる、理不尽だ、世の中腐ってる。
『あたしと楽しいコト、シない?』
『……いいけど』
『え、本当に?行こっ』
考えてみれば俺って誰かを好きになったことあったっけ。
恋とか、したことあったっけ。
それすら知らないまま死んでいくんだと思ったら、無性に泣きたくなった。
『名前なんていうのー?』
『……タカシ』
『タカシ?ふふ、ちょっと似合わないかも』
だろうね、適当だし。
こんな女に真面目に答える必要なんかない。
もうなんだって、いい。
『うわぁぁああんっ!!あぁぁーー…っ』
どこで死のうか、山のほうへ行こうか。
なんだったらこいつも一緒に道連れでもいいか。
そう思いながら見知らぬ女に腕を引かれつつ、逆に俺が誘導するようにも歩いていたとき。
恨みたくなる暑さとセミの声をよりいっそう際立たせるかのように、虫かごをぶら下げた小さな男の子が泣いていた。
『あぁぁぁーーっ、うわぁぁぁぁん…っ!』
なに泣いてるの、俺のほうが泣きたいよ。
対してつらいことでもないでしょ。
そうやって泣けるうちが幸せだ。