ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




『よしっ!じゃあお姉ちゃんと一緒にバッタ捕まえに行こっか!』


『うんっ!』


『えっ、嘘でしょ!?映画どーなんのよ李衣…!!時間ないよ!?』


『映画なんかどうせサブスクで観れるしっ』


『スクリーンで観なきゃ意味がないっつってたのはあんたでしょ!!せっかくチケット取れたのにー!!』


『ごめん楓花っ、北條くんあたりでも誘って行ってきて!私も楽しみだったから感想待ってる!!』



そう言うと、本当に泣いてる男の子の手を引いて友達を置き去りにしていった。

残ったクラスメイトのひとりはため息を吐きながらも表情は柔らかいもので。



『きゃっ!タカシくん…!?』


『誰それ』


『へっ?君のことじゃないの…?あっ、ちょっとー!!』



走れるなら、いま使おう。

すぐに俺は腕に絡みつく女を振り払って、バレないように2人の背中を追いかけた。


あの存在を見れば、俺の抱えたものがほんの少しでも軽くなるんじゃないかって。


そんなことを一瞬でも思ってしまったから。



『ギャッ!これ無理っ、むりむりっ』


『がんばってよおねえちゃん!あっ、そっちいった…!!』


『まてまてまてっ!あっ、やっぱムリ触れないってぇ…っ』



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