ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
本当に探してるし…。
そもそも触れないのに見つけようとするって、どんなにお人好しなの…あのひと。
近くの公園に行ってまでも、わざわざバッタを捕まえようとしていた。
『これっ、見てっ!捕まえたよ!』
『ちがう!それチョウチョウ!』
『ええ…っ、だめ…?お姉ちゃんこれで限界だよぉぉぉぉ』
『もっとがんばってよ!つかえないなあ』
『なっ…!今に見てろっ』
ふっと、自分に笑顔が浮かんでいることに気づかなかった。
けれど病気のことも一切考えていなくて、だから笑っていることにさえ気づいてない俺がいるのだ。
『ぎゃーーっ!!ゴキブリいるっ、まって、これたぶんゴキブリっ!!やだーーっ!!』
『しかたないからそれでいいよ』
『は!?妥協でゴキブリとかダメに決まってるっ!なに言ってんだこのガキんちょっ』
憎悪がないんだろうと思った。
青石 李衣の世界はとてもきれいで、優しさに溢れていて。
もしかするとこんな俺でも受け入れてくれる世界なのかもしれないって。
そんな場所に、行きたいと思った。