ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
あっ、声が大きいっ!!
みんな注目しちゃってる私を…!!
浅倉くんに聞かれてたらどーするのっ!
……って、イヤホンしてるからセーフ。
「ほらっ、ギャップってやつ…!完璧じゃないところがあるのは加点にしかならないよ…!」
ボリュームは下げつつ、テンションはそのままに続ける。
勉強もできるし、前回の期末テストでは学年上位に入っていた。
でもちょっとだけ運動が苦手だなんて。
それって逆に親近感が湧いて安心しない…?───と。
「へえ~、じゃあ李衣のタイプは浅倉みたいな人ってことだ」
「そ、そうなるの…かなあ?」
「がんばって。応援してる」
「えっ!?タイプの話をしてただけだよ!?」
「普通にベタ褒めだったし、ベタ惚れになるのも時間の問題じゃない?」
だから浅倉くんはちがうのっ!
キラキラしている俳優さんと、そこらへんにいる目立ちもしない一般人。
同じ世界なんか見られるはずがない関係だ。
「ったくよ~、決まらねえなあー。お前ら意欲がないんだよ。文化祭だぞ文化祭、やりてえことあんだろ」