ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
逃げと守りの自己犠牲
嫌な予感はしていた。
春休みになる前から、そして春休み中だって連絡頻度は減っていたから。
だからもう、なんとなく察しがついていた。
恋が終わる瞬間はたくさん味わってきた私だけれど、今回ばかりは全然ちがう。
「俺と別れてほしい」
高校2年生になって数日目。
私は浅倉 千隼に、そんな言葉を送られた。
「な、なんで……?私、千隼くんに…なにか嫌われるようなこと、しちゃった……?」
あの日、パンケーキを食べに行った日。
そこからだった。
そこからメール頻度が減って、電話は1回もしていなくて。
彼のお母さんを怒らせてしまったから、それが原因なのかなって。
現時点で考えられるものはそれくらいしか思い浮かばないから。
「…ごめん、青石さん」
名前で呼んでくれていたはずなのに、ここにきて苗字呼びに戻ってしまった。
「ご、ごめんじゃなくっ、理由を…!」
「あれ、遊びだった。まさか本気にされるなんて思ってなくて…面倒になったんだよ」
「…え……、」
「王様ゲームなんてそんなものでしょ。なんで俺、青石さんなんかにしたんだろ。
北條が言ってたみたいに葛西さんにしとけばよかった」