ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




涙は、出ないんだと。

人は本当に苦しくてつらいことを目の前にしたとき、まず涙は出ないものだということを知った。


そんなことをしていられる余裕がない。

脳がまず、フリーズする。



「だ、だって千隼くん…ラッキーセブンって…、」



あのとき、目が合ってたよね。

千隼くんは私が7番を引いたことに懸けてくれていたんじゃないの…?



「まさか青石さんだとは思わなかった」


「……葛西さんが、よかったの…?」


「…うん」



ゆっくり、ゆっくりと、私の視線は脱帽するように地面へ下がっていく。



「葛西さん…かぁ……」



えへへっと、渇いた笑い声まで飛び出してしまった。



「お似合いすぎる……、そうだよね、納得できる、」



じゃあずっと我慢させてたってこと…?

葛西さんに懸けていたけど私だったから、仕方なく今まで付き合ってくれて。



「わ、私のことは…好きじゃ、なかった…?」


「…面白い人だなとは思ったけど」


「す、好きでは…ない…?」


「…わかんない」



< 131 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop