ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
なにそれ……。
嫌いなら嫌いって言えばいいのに。
中途半端な優しさなんかいらないし、逆に言われたほうが私はもっと納得できる。
面白い人なんて、いまの千隼くんに言われてもぜんぜん嬉しくない。
「好きって……言ってくれてた、よ…?」
「…そーいう空気だったし」
空気……、
空気感で言っちゃうような人だったんだ…。
「こっ、これから好きになるとか…っ、そういうチャンス的なものは…!」
「葛西さんがいいって言ってんじゃん」
「……、」
生物準備室じゃなく校舎裏ってところがおかしいと思った。
呼び出されたのは湿った空気が充満していて、時折として当たる陽すらも逆光になってはお互いの顔を隠してしまう校舎裏。
そしてとうとう、ひとつ、私からポタリと落ちた。
「青石さんには…北條とかがいいんじゃない」
どんな顔をして言っているんだろう。
逆光ではあるとしても、怖くて怖くて顔を上げることができそうになかった。
笑ってるのかな、それともすごく冷たい目をして見下ろしているのかな。
「いちばんは千隼くんって…言ったよ私…っ」
ぜんぜん違う。
これはもう立ち直れないレベルだ。
今まで振られてきた辛さとは格が違いすぎる。