ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
担任の何度目かのため息。
わざとらしく吐かれたところでクラスメイトたちの意欲は変わらない。
最終授業の6限ということもあって、余計にみんなダルさ全開。
「とりあえず思いつくだけ候補出してくれないと話にならん。…しゃーねえ、こうなったら端から聞いてくか」
「はー?なんも思いつかねーんだけど!!」
「適当でいいって!無難なカフェとかさ!」
「まずお前らは考えることをしろ。はい、じゃあ佐々木から」
その強引さはまるで体育教師のノリ。
30前半でクラスを持った上地(かみち)先生は、これでも生物担当だ。
「よし最後、浅倉」
たこ焼き、焼きそば、わたあめ、チョコバナナ。
射的、お化け屋敷、カフェ。
ほとんどが「なんでもいい」との回答だったが、いくつかの出し物が黒板に書かれていって、先生は最後のひとりを見つめた。
「浅倉?聞いてるか?おーい、」
「……聞いてます」
「お前は何がやりたい?」
静まり返るクラスメイトたち。
彼から発せられる声を聞き逃すものかと、女子たちは動物のように目を光らせていた。