ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「だからクラスの奴らが“俺の家に遊びに行きたい”なんて言ってきたときな。
その瞬間が小学生の俺にとって幽霊なんかより怖かったわ」
「だからって、バスケとなんの関係があるのよ?」
早く知りたかったんだろう。
珍しく楓花が続きを求めた。
「そうすると、放課後も学校に残る口実が作れる。バスケしたいから体育館で遊ぼうぜって言えるだろ?
んで、“バスケ少年”なんて定着させれば集まる場所は自然と家じゃなくなるんだよ」
ほんとはバスケなんて興味もなかった───と、軽く笑った北條くん。
「別にそれなら野球でも良かったんじゃないの?サッカーとかもあるでしょ」
「わかる。いま考えると俺もそれは思う。けど、周りと違うことがしたいって逆に格好つけた当時の俺センスあるよな」
「そこで調子乗ると台無し。…けどなんか、周りにも自分にも気をつかってた子供だったのね北條って」
私もそれは思った。
そうやって自分に嘘を吐きつづけて、見せたくないものを隠して生きていたんだって。
すごく生きづらくて苦しかっただろうなって、今の話だけでも感じた。