ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
真実の欠片
「あんた、振られたんだって?」
「………」
誰から聞いたの、どうして知ってるの。
情報はどこから回って伝わる世の中なの。
というより一人暮らししてるはずのお姉ちゃんがどうして帰ってきているの…?
お家に帰ってきたときはまず「ただいま」って言うんだよ、そんな切なすぎる挨拶じゃなくて。
「振られたけど振られてない!自己犠牲されたの!……たぶん」
「あれ?ねぇお母さーん!李衣振られたんじゃないのー?」
「振られたはずよー」と、洗濯物を取り込むテラスから聞こえてくる、とある休日の16時半のこと。
犯人はお母さんか……。
まったくこの似た者親子には困ってしまう。
「振られた振られたうるさいっ!そもそもお母さんにも喋ってないのにどうして知ってるの…!!」
ソファーから飛び起きては走り寄って、エプロン姿の背中に問いかける。
「あんな泣き腫らした顔して失恋ソングばっかり流してはノートにポエム書いてたじゃない。そんなの察するわよ、誰だって」
「うわっ、そんなことしてたの李衣!ポエムとかはっずかし~!
初めての彼氏だったもんねー?イケメンだったもんねー?そりゃポエムるよねー?」
「っ、ポエムるってなに…!てかお母さん私のポエム見たの!?」
「たまたま見えたのよ」