ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「浅倉くん、だっけ?」と、わざとらしく強調してくる。
「じゃあ私は…何に騙されたの…?」
「その自己犠牲?ってやつ」
詳しく話してないのに、どうしてカラオケでの楓花と北條くん並の説得力があるんだろう。
もうやだ……このお姉ちゃん。
「どーせ、他の子のほうが好きだったとか、遊びだったとか、本気にされて面倒になったとか?このあたりを言われたんでしょ?」
「………」
図星すぎて言葉にもならないという、肯定。
それを受け取った姉は豪快に笑った。
「あははっ!あるあるすぎて言うほうも言うほうだけど、引っかかるほうも引っかかるほうだわ!
うそっ、あんたそんなありきたりワードに騙されたの!?」
「わっ、笑わないでよっ!私だって傷ついたんだから…!!」
「うん、もっと傷ついただろうね浅倉くんは」
クッションでバシバシと対抗していた動きが、思わず止まってしまう。
千隼くんが…?
どうして千隼くんが傷つくの…?
「そんな嘘を見破ってくれなくて。諦めず追いかけてくれなくて。ほんっと、そんなんで彼女やってたほうが驚きだわ~」
「そ、そんなの私だって…っ」
「じゃあ聞くけど。あんたは“嫌だ別れたくない”って1回でも浅倉くんに言ったの?」
「っ……、」