ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
そしてまた、言葉に詰まった。
「バカみたいに納得して従ったんでしょ?それ、最低なのはあんたでもあるからね李衣」
「……なん、で」
「彼が抱えてるものを理解しようとするどころか知ろうともしないで、あっさり別れて。
そんなのあんたも浅倉くんのことをちゃんと見れてなんか無かったのよ」
知るのが怖かったんじゃないの?
だから、あんたは逃げた───。
心を刺してくるひとつひとつに対して「なにも知らないくせに」とは、言えそうになかった。
「“理解がなければ愛は生まれない”───これ、あんたの教訓にでもしとけば?」
それを最後に落として、リビングを出て階段を上っていった姉。
彼はとてつもなく大きなものを隠している。
私が想像するものより、きっとずっとずっと大きなもので。
千隼くんのお母さんの涙や怒り、それすら関係してくるもので。
知りたいと思うけれど、知るのが怖いと思ってしまっている私がいたことも事実だった。
《今日の特集は“命”です。難病を患った少女と、支えつづける家族の絆に───》