ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




私はかなり恵まれている立場に身を置いているんだと、初めて実感した。


彼のことをいちばん知っているだろう医者が親族にいて。

いつも大事なことに気づかせてくれて、こうして急なわがままにも協力してくれる姉が近くにいて。



「叔父さん…!」



タイミングが良かった。
ロビーに入ったところで見かけるなんて。

お姉ちゃんには車で待ってもらっていて、私ひとりで院内へと。



「…なにしてんだ李衣。なにかあったのか?」


「叔父さんに聞きたいことがあって…!」



たったその言葉だけで、叔父は息を飲んだ。


関係してるんでしょ…?

前に叔父さんと話していた女性は間違いなく千隼くんのお母さんだった。

彼は大きなものを抱えているんでしょ…?



「浅倉 千隼くんのことで」



隠さずに言った。
隠してどうなるの、伏せてどうなるの。

ここまできたら私だって、いま持てる覚悟は持ってきたつもりだ。



「叔父さん、千隼くんは……、ALSっていう病気なの…?」



いつか足が動かなくなるの…?
手も動かなくなるの…?

歩くことも起き上がることもできず、自分で呼吸をすることもできず。

寝たきりになってしまうの……?



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