ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「───彼はALSではない」
ホッとしてしまったのは、たぶん、良いことではないんだろう。
それは“人として”正しいことではないんだろう。
そうではないと否定されて安心することは、決して間違ってはない。
だけど違和感がある。
この世の中に、あの難病を患ってしまっている人たちはどのくらい存在するのだろうか。
「ALSではないが……、違うわけでもない」
手足、のど、舌の筋肉や、呼吸に必要な筋肉がだんだん痩せて力が無くなっていく病気。
テレビの特集ではそう説明されていた。
寝たきりになった娘を見つめる母親の言葉が、いつか同じ言葉を私は彼に送るんじゃないかって。
そんな近い未来の想像が、なぜか簡単にできてしまったのだ。
「それは…似た病気って、こと…?」
だとすれば、私は彼女のような愛を注いであげられるだろうか。
切なくて優しい、絶対に裏切らない愛情を向けてあげられるだろうか。
実感できる反応がない存在へと、確かなものを渡せるのだろうか。
「っ…、教えて叔父さん…!千隼くんは、どんな病気なの…?」
「…そう簡単に部外者へ患者の情報を教える医者がどこにいるんだ」