ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。

繋がった手





ざわっと、それまで賑やかだった教室がガラリと変わった。

困惑、不安、疑問。

誰もが浮かべる感情の先には、ホームルームギリギリで教室に入ってきた男子生徒の姿。



「おい浅倉…?おまえ、どうしたんだよそれ……、」


「大丈夫…?事故…?」


「…別に。ちょっと転んだだけ」



頭に包帯を巻いて登校してきた彼は、いつもと変わらない表情で席についた。

ちょっと転んだだけで包帯って……。
そうじゃないよね…?


千隼くんにとっての“ちょっと”って、どれくらいなの…?



「浅倉、」


「大丈夫なんで。ホームルーム始めてください」


「…よし、じゃあ出欠とるぞー。青石、」



先生、「出欠とるぞー」じゃないよ。


そんなことどうだっていい。
気にすることは他にあるでしょ…?


それとも今の一瞬で先生を説得させてしまうほど、彼は腫れ物のような存在なのだろうか。

生物準備室の鍵を持っているのだって、ぜんぶに辻褄(つじつま)がひとつずつ合ってゆく。



「あおいし、おい青石、───青石!」



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