ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「そっち系になったら嫌じゃない?」
「そっち系?」
「寝たきりとかさ、そーいうの。もし自分が障害を持つとしたら綺麗な病気になりたいよね」
あるわけないよ、綺麗な病気なんか。
なにを言ってるの。
きれいな病気?
あるならみんなが望んでるよ、そんなの。
現実は苦しくてつらくて、死んでも死にきれない感覚なの、きっと。
「よく感動映画とかで見るのもさ、脳腫瘍とか心臓病とか?あまり外傷としては目立った表現をしないものを選んでるじゃん」
「あ、確かに。結局ふわっと表現してるからそこまで辛そうに見えないよね」
「そうそう。だからもし自分や身近な人がなるって考えたら、ああいう病気がいいなあ。それを支えるラブストーリーとか憧れる!」
イヤホン、音楽を流しててね。
止めてたりしたら駄目だよ。
聴いてるふりなんかしてたら、だめ。
「だって寝たきりなんて、お風呂どうすんの?トイレは?そんなの可哀想で見てられな───」
「うるさいッッ!!!」
バン───ッッ!!!
おもいっきり机を叩きながら立ち上がったことによって、お弁当が飛び散りながら床に落ちた。
所々からの会話が混ざって雑音を生んでいた教室内は、さすがに黙りこんでしまう。