ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
耐えられる……?
まだ17歳だよ…?高校2年生なんだよ…?
今だってクラスメイトにも、彼女だった存在にも隠しつづけているような男の子なんだよ…?
「李衣……!」
それは誰の声だったんだろう。
もうぐちゃぐちゃなまま、ワケが分からないまま。
私は教室を飛び出して、走って、走って。
「うぅ…っ、ぁぁぁーーーっ、」
すれ違う生徒みんながジロジロ見てくる。
泣いて、走って、泣いて、走って。
その繰り返しをしただけで、はっきりと心臓の動きは私のなかで脈を打った。
生きているとはこういうことなんだと実感すると同時、どうしようもできない現実を目の当たりにして絶望まで感じてしまう。
《だんだん全身の筋肉が動かなくなっていく姿を見て…親である私が変わってあげられたらと、何度も思いました》
《こうして繋いでいると、微かに握り返してくれる感覚があるから。
思い込みかもしれないけれど……“ママだいすき”って言ってくれているような気がするんです》
あの強さはどこからやってくるんだろう。
テレビ画面に映っていた、親と子の強さは。
『ALSではないが……、違うわけでもない』
その瞬間、聞かなければ良かったとも思ってしまった。
覚悟なんかできていなかった。
ろくな覚悟なんか、本当の覚悟なんか。