ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




もう後戻りできない自分の行動に対する不安の大きさに立ちすくんでいると、いつの間にか目の前に来ていた千隼くん。


手を繋いでないからだよ。

私と手を繋いでいなかったから、そんな傷を負ってしまったんだよ。


私が簡単に手を───…離してしまったから。



「…なにしてるの、ほんと」



わかってる、ごめん、ごめんね。

言葉とは裏腹に優しく言ってくる彼に、涙だらけのまま固く閉じたまぶたで答える。


馬鹿なことをした。

どうしたらいいか分からないから、感情のまま突っ走った。



「だって…っ、ほうたい……、いたい…っ?」


「それダジャレ?」


「………」



くすっと、小さく響く音。


そうじゃない、本当に本当に見てるこっちが痛くなりそうな怪我だから。

居たたまれなくなって地面を見つめていると、彼から感じるのは安心しきった空気。



「…おいで」


「わ…っ、」



ぐいっと腕が取られて、ゆらりと体勢を崩しながらも開けられたドアのなかへ一緒に入った。


次の時間を使うクラスはないみたいで、生物準備室から繋がる実験室のほうもしんと静まり返っている。

ドアふたつ、両方の鍵さえ中から施錠してしまえば、そこはもうふたりだけの世界。



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