ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「とくに外とか、人通りが少ない階段は危ないから避けろって言われてたけど……俺、強がった」
ひとりで生きられる、ひとりで生きなくちゃだめ───。
きっと彼はこんなふうに、たったひとりで歩いていたんだろう。
「でも李衣と手を繋いでたら違ったのかなって…、たとえ転んだとしてもこんなに痛くないんだろうなって、
……自分から突き放したくせに、結果こんな包帯姿になって後悔だらけ。…俺ほんとダサくて格好わるい」
「そんなことない…っ、守ってあげられなくてごめんね…っ、ごめんね、」
守るって言った。
私がずっと手を繋いでるって。
暗いところが怖いなら私が光になってあげるし、転んだならおぶってまでも運ぶ。
どんな千隼くんを見ても離れないって、私は自分に誓ったのに。
「李衣の叔父さん、…青石先生は俺の主治医なんだ」
こくんと、静かにうなずく。
確信は無かったけれど、わかってはいた。
「俺は……、…あの大学病院によくリハビリに行ってて、…だから休みの日とかもデートとか多くはしてあげられなくて、」
「…うん」
「母親もあんな感じだから…、…あのときはごめん」
すぐにぶんぶんと、首を横に振った。