ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「それでも俺は……李衣と一緒にいたい」
彼が自分のことを話してくれたのは、そこまで。
それ以上は、この時点では言おうとしなかった。
私の反応が怖いというのも理由のひとつとしてあるんだろう。
けれど、“言ったうえで傍に居られる”ことの違和感も、きっと理由のひとつでもあって。
何よりいちばんは。
回りくどいやり方なんかすべて消去して、最後の本心だろう言葉を直球で伝えることを千隼くんは選んだのだ。
「わ、私も千隼くんと一緒にいたい……っ、……けど、」
「けど…?」
「千隼くんは…葛西さんのことが好きだから…、」
葛西さんはすごく可愛いし、男子からも人気者だから、それは本当なんだろうなって。
「か、葛西さんが良かったって…、そこに懸けてたって言ってたから…」
考えこんでしまって足元をなぞっていた顔が、ふわっと包み込まれた手によって戻される。
「俺、李衣の運命の王子様になりたかった」
「へ…?」
「言ってたでしょ。つぎは7人目だからって」
「───…」
やっぱり聞いてたの…?
本当に私の話をぜんぶ聞いてるんだ、千隼くんって。