ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
お姫様になれた日
「でっ、で!!それで!?チューしたか!?」
「しっ、してないよ…!?ないないっ、してないっ!!」
「ええ~っ!その流れはするでしょーっ」
机を取り囲む数人の女の子たち。
楓花を筆頭に、似たタイプが次から次に質問してくる。
「まあでも、無事に戻って良かったわ」
「…いろいろありがとう楓花」
よほど安心しているのか、この話をする度に大きめなため息を吐いてくる。
肩をすぼめるようにしながらも心からの気持ちを込めて頭を軽く下げた。
「北條にもお礼言っときな?一応ね」
「えっ、それは……千隼くんが言わなくていいって」
「「「独占欲ーーーっ!!!」」」
揃った声。
きゃあきゃあと、唐突な胸キュンにテンションが上がったクラスメイトたち。
あの日、私が咄嗟な思いを爆発させてしまった2人の女の子たちには後日謝罪をした。
今までより少しだけぎこちなくなってしまったけれど、彼女たちも同じように頭を下げてくれて。
「ごめんね千隼くん、もうすぐ書き終わるから…!」
「平気。待ってる時間も好きだし」