ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




顔がポッと熱くなる感覚のなか笑顔を見せると、柔らかい眼差しが返ってくる。


日直の学級日誌に残っていた放課後。

隣の席には千隼くんが座って、私がシャーペンを動かすところを頬杖をつきながらじーっと見つめてくる。



「李衣、このあとパンケーキ食べにいこう」


「えっ、でも遅くなっちゃダメだから…」


「母さんにはもう言ってある」



まさか千隼くんから誘ってくれるなんて。

パンケーキにはいろんな思い出があったから、こうしてまた重ねられることが嬉しい。


「うんっ」と、私らしい返事をした。



「おい拓海!お前ふざけすぎだっつの!」


「ふはっ!“きのう確実にスーパー銭湯に行ってたヤツ”ってなんだよ!!」


「こっちは“玉ねぎの擬人化”とか書いてるしよ!この借り物競争、ゴールさせる気ねぇだろ!!」



そんな私たちの後ろからネタバレを含んだ楽しそうな声が聞こえてきた。

囲われてる北條くんは「借り“物”じゃなく、借り“人”な」と強調しながら、どこかふて腐れている様子。


どうにも体育委員として任されていたくじ引き作りをサボり続けていた結果、明日の朝に出せと強制的に言われたらしいのだ。



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