ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「これすっごく美味しいっ!」
「李衣、そんなに食べて大丈夫?このあとパンケーキ食べるけど」
「最近は食欲がすごくて!ほら、夏が近いからっ」
「……それ言うなら秋じゃない」
まるで食事のように試食する人がいる、なんて聞いたことがある。
たぶんだけど……それは私のことだと思った。
「ふふ。こちらにも試食はありますので、ぜひ召し上がってみてくださいね」
「あっ、はい!いただきますっ」
「“いただきます”って、食べる気満々だし」
「千隼くんもこれっ、どーぞっ」
差し出してみると、ぱくっと流れるままに口に入れてくれる。
自分でやっておいたくせ、とんだ大胆なことをしてしまったと恥ずかしくなった。
「千隼くんのアイスクリームが乗ってるね!」
「たべる?…はい、」
パン屋さんの次はパンケーキ屋さん。
前に来たときと比べて、店内もパンケーキもキラキラ輝いているように見えた。
「えっ、いいの!?───おいしいっ」
「…これ俺のフォークだけど」
「へっ、わ…っ!?ごっ、ごめん…っ!そういうつもりじゃ…!」
「俺はそういうつもりだった」
「………。───っ!?!?」
もし“幸せ”というものを別の言葉で表現しなさい、なんて言われたら。
私は「今の時間」と、胸を張って答える。