ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




だから千隼くん、
私たちはすごくラッキーだったんだよ。


みんなはこういうものを「当たり前」だと思ってしまっているから、本当の幸せを見逃しちゃってる。

だけど私たちは「当たり前じゃない」と気づけているから、いちばんの幸せにも気づくことができる。



「李衣、そろそろ電車乗らないと暗くなってくる」


「千隼くんのお母さんがお迎えに来るまで…ちょっと涼みたくて、」


「…ん」



少し前に包帯は取れて、あの心配になる姿では無くなった千隼くん。


駅前が私たちの解散場所。

けれど私はギリギリまで一緒にいたいから、こうして何かと理由をつけて彼の手を握り、ロータリーのベンチに座る。



「李衣は体育祭、サッカーだっけ」


「うん」



男子は3人4脚と、借りるのは人限定という、ちょっと変わった“借り人競争”なるもの。

女子はサッカーとバレーボール。



「……ふっ、」


「あ!去年の授業でのこと思い出してたでしょっ」


「ははっ、顔面は気をつけて」


「もーっ!」



その笑顔を見るだけで幸せすぎて泣きたくなるなんて、知らなかった───。



< 181 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop