ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
だから私を借りに来たと…?
こんなにガッシリ掴まえて、私を連れていくつもりだと…?
怒りと呆れが混ざった反応をしていると、他の選手たちからも文句が聞こえてくる。
「“前世は恐竜だった女子生徒”とか意味わかんねえよ…!!見つけたところで殴られるだろ俺がっ!!」
「“玉ねぎの擬人化”なんて知らねーんだけど!!」
「“きのう空飛んでたやつ”って…、っんだよそれっ!!馬鹿じゃね!?」
これは苦戦しそうだ…。
いったい千隼くんは何を引いたんだろう…。
でも私のほうへ向かってきていたから、もしかすると私が関連する何かが記入されていたのかもしれない。
「来い青石」
「えっ、ちょっ…!」
ぐいっと引かれる。
これは借り人競争だから、彼の行動は間違っているわけではない。
でもずっと私たちを見て立ち尽くしている千隼くんがやっぱり気になってしまう。
「───浅倉、ほらよ」
戸惑う私、戸惑う千隼くん。
この人は一体なにがしたいのだと、誰もが困惑していた。
諦めて北條くんの借り人になっていれば、彼が向かった先はゴールではなく、立ち尽くしていた千隼くんの前。
スッと腕を離された私は、北條くんから千隼くんへと渡される。