ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「俺は───…病気、なんだ」
教えてくれて、話してくれて、ありがとう。
私の胸にはまず、こんな気持ちが生まれた。
「個人差が激しいとしても、最終的には寝たきりになる……そんな病気なんだ」
そのあとに、どうして彼だったのですか───と。
誰かを責めたくなった。
ただただ、見えない誰かを責めてしまいたくなった。
「SMAって略される、脊髄性筋萎縮症っていう…難病で」
知っていたよ。
ALSという難病を調べると、類似したそのアルファベットは必ずと言っていいほど出ていたから。
だからね、覚悟はできていた。
彼の口からその名前が出る覚悟だけは、今この場所にギリギリ持っていた。
「あのときクラスの女子が言ってたように…、きれいな病気ではない、…惨めで、見てられないような…そんな病気だ」
“きれいな病気”なんか無いよ。
だけど、“惨めで見てられない病気”も無いんだよ。
そんなの無いんだよ、千隼くん。
「いつか俺は確実に…李衣を抱きしめてあげることすらできなくなって、いつ何が起きるか分からない身体になって……命の保証もできなくなる。
だから約束もしてやれないし…、きっと、これからたくさん泣かせると思う」