ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
たとえ健康だったとしても、人間はいつどこで何が起こるか分からない。
そのうえでする“約束”というものは、意味があるのだろうか。
泣くことは言わば命あるものの特権でもあるはずだ。
それは他と何が違うのかな。
ただ少し、ほんの少しだけ、周りの人より試練が多く出されてしまっただけ。
そして同じくらい、周りの人より命の尊さを感じることができる立場に置かれただけ。
「俺とずっと一緒にいて、なんて無責任なことは言わない。途中で逃げたくなったら……逃げていい」
ただただ、強いひと。
ただただ強くて、格好いい、私のいちばん大好きなひと。
「でも…今だけは、…俺の隣に……いてほしいんだ、」
私たちが生きているのは“今”だよ、千隼くん。
過去でもない、未来でもない、この“今”に生きてるんだ。
その“今”という時間が、気づけば未来に立っていて、振り返れば過去になってるの。
「ちはやくん」
「うん…?」
「千隼くん」
ちはやくん、千隼くん。
私は何度も何度も、彼の名前を呼んだ。
手をぎゅっと繋いで、何度も何度も。