ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
ここは愛想笑いで乗り切る。
コキッと肩を鳴らす先輩保育士を見ていると、お節介にも肩もみをしてあげたくなった。
「あっ、ごめん。帰るとこ足止めしちゃって」
「いえいえ…!では、お先に失礼します」
「お疲れさま~」
短期大学を卒業して保育士資格を取得。
新卒で入った職場は、開園してから年月が浅く、まだ新しい保育園だった。
最寄り駅まで徒歩10分。
そこから一人暮らしをするアパートへは、電車に揺られて15分ほど。
「ふふ。りい先生、だって」
気にする暇もないくらい忙しく楽しく過ぎてゆく毎日のなか、ふとしたとき、急に実感して恥ずかしくなる。
いまだに慣れない。
園児たちも職員たちも、みんな揃って“りい先生”と呼んでくること。
「似合う?あ、もしかして笑ってる?」
微かな茜色がグラデーションされた空を見上げて、変わらない笑顔でつぶやいた。
見てくれているのかな。
どこから見ているのかな。
私はいつも、今も、ずっと、君のことを忘れた日はないよ。
「ねえねえ、ご飯たべていこうよ」
「帰ってテスト勉しなきゃ俺ヤバい」
「え~、まだ一緒にいたいもん」