ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
今までのように“叔父と姪だけ”の関係では無くなったからこそ、ようやく今になって会いに行こうと思った。
千隼くんが私にすべてを話してくれた、今。
「叔父さん、千隼くん…松葉杖で学校きたよ」
「…どこまで知っているんだ、お前は」
「今のところはぜんぶだと思う。SMAって病気のことも話してくれた」
「…そうか」
院内の簡易的な休憩スペース。
自動販売機が並んでいて、小さなフードコートのように机とテーブルが置かれている。
「ここからどれくらいのペースで進行していくの…?」
本当は言葉にすることも嫌だった。
だとしても現実をしっかり正面から見なくちゃいけない。
そう、彼はもう、今までどおりには歩けないのだ。
「それは言えない」
「なんでっ、もういろいろ千隼くんから知らされてる…!私には隠さず話してくれた、だからっ、」
「わからないんだ」
立ち上がりかけた私は、ゆっくり座り直した。
減らないコーヒー。
去年の予防接種のときよりも老けて見える叔父は、この大学病院で彼だけではない難病患者の担当もしている。