ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




優しさは相手だけじゃなく、時に自分を傷つける───叔父さんの言葉は正しいのだと思う。


中途半端な優しさは、自己満足な優しさは、誰の心も満たすことはできない。

だから今だって叔父は、“お前はまだ分かってない”と言ってくるのだろう。



「千隼くんは…、逃げたくなったら逃げていいって、私に言ってきた」



あんな言葉を言わせてしまったんだ。


自分を犠牲にしてまでも私から離れようとして、歩道橋の階段から落ちた。

体育祭で生徒たちに笑われたって、ひとりで立って、ギプス姿になって松葉杖で学校に来て、それでも周りに隠しつづけて。


だけどね、唯一、私には話してくれた。


きっと千隼くんも期待してたんだと思う。

私だけは離れないんじゃないかって、私だけは受け入れてくれるんじゃないかって。


でも、ごめんね千隼くん。

私が君の病気を受け入れた理由は、“千隼くんの期待に応(こた)えたいから”なんて理由じゃないんだ。



「なにが正しいのか、なにが千隼くんに対する正しい行動なのか…、私はバカだから分からなかったよ叔父さん」



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