ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




何度も何度も、たくさんたくさん考えた。

私に何ができるんだろうって。

私がいることで逆に彼を傷つけないかって、叔父さんの言葉を踏まえて考えて考えた。


だけどやっぱり“千隼くんのために”として取る行動に、どこか違和感があった。


だって私、“千隼くんのために”してるんじゃないから。



「世の中は妥協ばかりだって、今日も駅前で演説してる人がいてね」



片方の意見にもう片方が折れなければ、話が前に進むことはない。

双方の意見を尊重して出す答えというものは、結局はお互いが妥協しあった結果でしかないのだと。



「叔父さんはどう思う?妥協ばかりだと思う?」


「…どうだろうな。でも確かに、それが社会だと言うこともできる」



なにをするにしても我慢は付き物。

どちらかが勝って、どちらかが負ける。
そこに責任やお金が乗ると、仕事になる。



「私も、そうかもって思った。クラスにも浮いちゃってる子がいるんだけど、その子いつも強気なグループの言いなりみたいになってる」



妥協ばかりが溢れている。

それは“うん”って言わないと、危うく自分の立場を失ってしまう場合があるからだ。



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