ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「だから一見すると仲が良いようにも見えて、でも実際は言いなりになったことに対する対価が払われてるだけなの」
「利益が発生すると、そこしか見えなくなる奴らが大半だからな。
しかも自分の利益のためなら平気で嘘をついて、誰かを虐(しいた)げるのが世の中でもある」
「…うん、本当にそう思う。どれだけ上手いこと言って、どれだけ相手を騙せるかってとこだよね」
理不尽なことばかりだ。
どうしたって強い存在には逆らえない。
それは逆らってしまったあとを想像したほうが怖いから。
千隼くんもそうなのかな。
彼にとって何より強い存在は病気で、だからこそ妥協を使って受け入れたのだろうか。
「でも、その人たちだって、またその上に逆らえない何かがあるんだろうなって。
だから…根本原因はなんだろうって私は考えたんだ」
そこでやっと、たどり着いた。
「…自分、じゃないかって」
相手じゃないの。
いつだって、どんなときだって、敵は己のなかにあるものなんだって。
それを私もみんなも消すことができないから、他者になすりつける。