ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
増悪がない世界に行きたい、誰のことも恨まない世界に行きたい───。
ここまで考えてやっと、やっと、彼の願いの一部が分かったの。
「李衣、ならお前は…浅倉くんの病気を受け入れようとする自分に妥協したってことか?」
私はハッキリと首を横に振った。
「ちがう。私は千隼くんにも、千隼くんの病気にも、それを知った自分にも妥協したつもりはない。
もっとシンプルなんだよ叔父さん。だって私がそんな難しいこと考えられるわけないもん」
病気はつらいものだ、苦しいものだ。
だからそんな彼が求めていたから、私が折れて応えるしかなかった───なんてものじゃない。
って断言してしまうと、冷たい人間だとも思うけど。
「私…、妥協は単純に“自分の気持ち”に対してした」
「…自分の気持ち?」
「うん。自分がこうしたいって言ってたから、そうするの。私は単純な気持ちに対して妥協したんだよ」
どうしても自分がそうしたいって言うから、そんな気持ちに納得した。
わかったわかった、私はそうしたいんだね。
それなら仕方ない、そうするしかないよねって。