ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「私が千隼くんと一緒にいたいんだって。だから妥協して、そうするだけ。
千隼くんが夢みる世界に私も一緒に行きたいって、どうしても私の気持ちが言うから。だからそうするしかないでしょ?」
それ以外は考えたってどこにもたどり着きそうになかった。
だからもう、そこは考えないようにした。
「それを主治医である叔父さんに伝えにきたの、今日は」
身勝手、自己中心的、自由奔放、傍若無人。
どれを言われたって曲げるつもりはない。
すると黙って聞いていた叔父は、張り詰めていた空気を溶かすように柔らかい息を吐いた。
「お前は昔から嘘だけは言わないのと、芽衣と違って心から気に入ったものには諦めの悪い強情なところがある」
「…うん」
「きっと彼はお前にしか見せない顔があるんだろう。…なにか少しでも違和感があったら、どんなことでも必ず俺に伝えるんだ」
言い終わったと同時、白衣のポケットに入っている携帯電話が鳴った。
それは医者である彼に持たせられる特別なもの。
私がうなずいたことを確認してから、叔父さんは院内の奥へ足早に消えていった。