ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
それからお姉ちゃんはなぜか車で送ってくれて。
病院の駐車場にて、助手席から出ようとした私へと、そのタイミングをずっと待っていたかのような停止がかかる。
リハビリを頑張っている千隼くんに会いに行きたい衝動を抑えながら、私はドアを再び閉めた。
「親ってのは結局、自分の子供がいちばんだからさ」
「え?」
「もし、浅倉くんとのことでお父さんとお母さんがいろいろ言ってきたとしても…、あたしはあんたの味方だからね李衣」
彼が難病を抱えていること。
今もこの大学病院のなかにいて、私たちの叔父である男が主治医だということ。
お姉ちゃんには一切話していなかったとしても、なにか勘づいた部分があったのだろう。
言い聞かせるように言ってきた。
「なにかあったらいつでもあたしを頼りな。こうして送り迎えくらいしかしてやれないけど…無いよりマシでしょ」
この安心感を、私は千隼くんに与えてあげたいと思う。
大丈夫だよって。
どんな現実が待っていたって、必ず私は手を繋いでいるよって。