ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「美味しい…?」


「…味がしない」


「えっ!?うそっ、ごめん…!そんな無理して食べなくてもっ」


「はは、ごめん冗談。…おいしい」



なんと心臓に悪い冗談を…。

ドキドキと緊張していた気持ちが一瞬だけヒヤッとして、次に倍の嬉しさになって戻ってきた。



「もう1年が経ったんだね」


「…早いな」



去年の同じ時期。

イルミネーションへ行って、そのときも今みたいに肩を並べて座ってた。



「そうそう豚汁!美味しかったなあ」



膝にマフラーをかけてくれて、ちょっと冗談染みたことを言われて。

“浅倉くん”はこんなことも言うんだ…って発見が嬉しくてドキドキして。


もっと一緒にいたくて、イルミネーションから外れた場所で初めてぎゅってしてくれた。



「…どんどん変わっていくね、李衣」


「え…?」


「会うたびに変わってく。今もメイクとかもそうだし、…なんか俺だけ退化してる感じだよ」


「そ、そんなことないよ…!!」



退化なんて言っちゃだめ。

それは退化じゃない。



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