ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
確かにひとつひとつ不自由にはなっているかもしれないけれど。
でも退化じゃないよ、むしろ千隼くんは誰よりも前に進んでいる。
「千隼くんはいちばんだよ…!ずっとずっと……私の、いちばん」
「……」
「わ…、」
周りには誰もいなくて、冬に咲く花が見守ってくれているベンチにて。
ふわりと、あたまが撫でられた。
されるがまま撫でられつづけていると、しばらくしてから「あ、」と千隼くんは気づく。
「……ごめん、無意識」
ほんのり染まった顔を逸らしながら、ぽつり。
覗きこもうとすると、ぐいっと阻止された。
「ちはやくん」
「なにも言わなくていいから。今のは忘れて」
「いやだ。なにがなんでもぜったい覚えてる」
「………」
しらーっと見てくるから、にひっと笑ってみせる。
恥ずかしさを隠すように、千隼くんはおかずをひとつひとつ口に運んだ。
「ねえねえ千隼くん、あーんってしてあげよっか」
「…大丈夫」
「遠慮しなくていいのに~。ほれほれっ」
「…李衣、面白がってるでしょ」
「うんっ」
すると彼は改まって、口を半開きにしてくる。