ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
でもね、人体模型があるの、目の前に。
びっくりするよ、だって生物準備室だもん。
確かに誰もいなくてふたりだけの場所だとしても。
まさかここで浅倉くんとお弁当を広げる日がくるなんて、いろんな意味で驚きの連続だ。
「わっ!浅倉くんのお弁当おいしそう!」
「…普通だよ」
「だってこれっ、見るからに手が込んでるおかずだもん…!見て見て、私のほうはほとんど冷凍食品!」
いつもひとりで静かに食べているから、どんなお弁当なんだろうって実は気になっていた。
ひとつひとつが“普通”だなんて言えないレパートリーのものが色とりどりに詰められていて。
「浅倉くんのお母さんはお料理上手なんだ…!」
「…栄養あるものを、とは、いつも言ってるかな」
「すごいなあ~。いろいろ考えて作ってくれてるんだね」
うちのお母さんも毎日作ってくれてはいるけれど、大体が夕飯の残り物か、今日みたいな冷凍食品。
「文句あるなら自分のお小遣いから買いなさい」と、言う前に回り込まれてしまうから。