ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「千隼くんは、千隼くん。私が大好きな千隼くんは千隼くんしかいない。
たとえ歩けなくなって、この先もっと病気が進行したとしても……私にとっていちばんであることは変わらないよ」
誰が逃げるものか。
誰が負けるものか、誰が怖じ気づくものか。
叔父さんが言っていた。
私は心から気に入ったものには諦めの悪い強情なところがあるって。
それを嫌になるまで君に教えるつもりなの、私は。
「…俺にとっても李衣がいちばん」
すきだよ、だいすき、世界でいちばん。
そっと引き寄せて撫でてくれる暖かさは、今まで感じたことのない優しさがあった。
「───青石さん」
それからリハビリに戻っていった千隼くんを見送ると、ずっとお互いにどこか距離を置いていた存在から声がかかる。
振り返った先には千隼くんのお母さんが立っていた。
「ずっとあなたと話したいと思っていたんです」
こうして改めてふたりきりは初めてだった。
いつも私と彼女が鉢合わせるときは、何かとタイミングに恵まれない。
とりあえず目立たない場所にある自動販売機横の長椅子に案内して、私は飲み物をひとつ渡した。