ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「…よく笑うようになったの、」


「千隼くんが、ですか…?」


「ええ。…病気が発覚してから、あの子は逆に笑うようになった。それはきっと青石さんのおかげなのね」



彼の病気が発覚したとき、それは去年の8月7日だと少し前に教えてくれた。

ここでもラッキーセブンがあるのに、そうとは思えなかった私。

だけど千隼くんは噛み締めるように言ったのだ。


ラッキーセブンだったんだ───って。



「なのに千隼にも青石さんにも…最低なことをしてしまった…、ごめんなさい、本当にごめんなさい…、」



病気になった息子を見ていることしかできない彼女もまた、誰よりも苦しい思いをしている。


だから、ああいうところでしか泣けないんだ。

息子の前では母親であるために、コインランドリーや、今のような場所でしか。



「自分はすごく親不孝だって…言ってました」



私にお姉ちゃんがいるって話をしたとき。


俺は一人っ子だから親不孝だ───って。


そのとき、うまく反応できなくて。
だって私は彼のお母さんではないから。

だから彼女はどう答えるんだろうって、私が知りたくなった。



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