ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




増悪がない世界に行きたい、ふたりだけの世界に行きたい───、


それは紛れもなく、浅倉 千隼の夢だ。



「私が必ず千隼くんの夢を叶えてみせます…!!」



私だけが聞くことができた彼の夢は、私にしか叶えられない。

そしてその夢は、私と千隼くんの夢でもあるから。



「青石さん…、」



肩を震わせて、声を押し殺して。

そうやって、そうやって、涙を流す女性。



「私は千隼くんのことが…大好きです。この先も、ずっとずっと大好きです」



どんなに細くなってしまっても。

自由に身体が動かせなくなって、自分で身体を起こすことすら困難になってしまったとしても。



「だから私も、どんなに周りから“別れろ”と言われたって…ぜったい別れません。
意地でも隣にいて、ずっと手を繋いでやります」



もし千隼くんがまた自己犠牲で私から離れようとしても。

そうじゃなく、八つ当たりするみたいに突き放してきたとしても。


そんなところもあるんだね、そんな顔を見せてくれるようになったんだねって、自分勝手な解釈をしてまで隣にいるつもりだ。



「なので…私の前では泣いてくれませんか…?千隼くんの前では隠す涙を…、私には見せてください」



何度も何度もうなずいてくれる。

このとき一緒に流した涙を、私は忘れることはないんだろう───。



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