ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「いつもなんの音楽聴いてるの?」
「…聴いてない」
「えっ、でもイヤホンしてるよね…?」
思ったよりお互いに人見知りすることは無くて。
ずっとこうして話してみたかったよね───なんて空気を感じ取れてしまうくらい、浅倉くんとの時間は穏やかだった。
「……実はあれ、なにも流してないんだ」
「そうだったの…?でも、どうして…?」
「…周りの音を直には聞きたくない、けど…無かったら寂しい。だから、あの形で聞こえてくるのが落ち着く」
やっぱり私が思ったとおり。
浅倉くんには浅倉くんの世界がある。
浅倉くんしか踏み込めない場所で、とても優しくてきれいな世界。
「あと青石さんの話は…すごく楽しいから」
「っ、たの、しい…?」
「うん」
どんな話をしてたっけ、私は楓花といつもどんな会話をしてたんだっけ…。
まさか浅倉くんが聞いてくれていたなんて考えてもなかったし、そもそもそこまで内容が詰まった話でもなかったと思うのに。