ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
あれ……?
でもなんで千隼くんが知っているんだろう。
私は彼にその話をした記憶がない。
「───…保育園の先生、」
すると、想像もしていなかった言葉がつぶやかれた。
「え…?」
「俺が李衣の夢を勝手に決めるつもりはないから、医者になりたかったらもちろん応援するけど」
でも、と。
優しい顔でつづけられる。
「すごい想像できるんだ。李衣がたくさんの子供たちに囲まれて笑ってるとこ」
まるでそれが、彼の夢でもあるかのように。
大切そうに、穏やかに、嬉しそうに言われてしまっては。
本当は、本当はね。
自分の将来なりたいものという意味での“夢”は決まってなかったの。
私は、わたしは…、
千隼くんとずっと一緒にいたい───…。
それが私の夢だった。
「保育園の…せんせい、」
「そう。ははっ、子供と一緒になって走り回ってるんだろうな李衣」
「───っ、」
気づけば咄嗟に抱きついていた。
膝を落として、同じ背丈にして、ぎゅうっと腕を伸ばして。