ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「なる、なるっ!ぜったいなる…っ」
「…医者も似合うとは思う。だから、そっちがもし無理なら…候補に入れてくれると嬉しい」
「ううんっ、保育園の先生になってカブトムシとか蝶々とかっ、子供たちと一緒に捕まえるの…!」
「……じゃあそのカブトムシと蝶々は、たぶん生まれ変わった俺だから」
千隼くん、そんな顔をしないで。
これは私の夢だよ。
君の夢じゃない。
なのにどうして、どうしてそんなにも幸せそうに笑っているの。
「生まれ変わりじゃない…、千隼くんはここにいるから…!ずっとずっといるから…っ、そんなの言っちゃだめ、」
「…口を動かしてさ、」
「…え…?」
「手や足が動かせなくても、口で筆を咥えて絵を書いてるんだ。とある有名絵師の…SMAを患った人は」
私は、ただ聞いていた。
どんな反応をするのが正しいのかを考えてしまった時点で最低だと思ったから、ただただ静かに聞いていた。
「そうやって夢を叶えてる人もいる。だから俺も……まだ諦めるのは早いのかなって」
大きな声を出して、小さな子供のように今すぐにでも泣いてしまいたくなった。
嬉しさと、切なさと、小さな場所に大きな希望が見えた気がして。
「そっ、そうだよ…!気持ちさえあれば、叶えられないことなんかないよ千隼くん…っ」
「…うん」
「千隼くんは何がしたい…?どんなことに興味がある…?」