ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




未来が、見えた。


荊棘(いばら)だらけの暗闇、小さな懐中電灯をひとつ持って、ふたりで手を繋いで進んでいた場所に。

たったひとつの光が射す抜け道を見つけたような、やっとここまで来たんだねって再確認できたような。



「実を言うとそれはもう叶ってる」


「え…、叶ってる…?」


「うん。だから俺は、こうして李衣と手を繋いでいられればいいんだ」



無欲すぎる、謙虚すぎるよ。

付き合ったばかりの頃から千隼くんはブレてない。



「───…俺からじゃなくてごめん」



しゃがみかけるように、今度は私が覗きこむ形で唇を合わせると。

なんとも彼らしい言葉が返ってきた。



「だいすき、千隼くん」



それ以上の言葉が浮かばないくらい、それだけしか言えないくらい。

手を握って、しっかり目を見て、今ある時間を抱きしめる。



「…どれくらい?」


「これくらい…っ」



ポロポロと溢れては止まらない涙。

切なくて苦しくて悲しくて、だけど幸せで仕方がなくて、やっぱり愛しさばかり。



「…俺のほうがだよ」



自分の将来、自分の未来。

考えていい当たり前を、私たちとまったく同じに考えることができない彼は。


ただ、強くて。ただ、格好よくて。


私はそれを理解できているかは分からない。

けど、愛とはこういうものなんだと思った。



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