ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
見せられない涙
「あーっと、それと青石」
高校3年生になっても変わらない担任。
学級日誌を届け終わった私は、職員室にて上地先生と向き合う。
「進路のことなんだがな、今の成績だと医学部は余裕でキツいぞ」
「あ、先生。そのことなんですけど、医学部やめました!」
「え?やめた?」
「はい、保育士になります!だから進路希望調査書は書き換えるのと、あと、奨学金申請のほうもお願いしますっ」
「保育士ってことは……最短ルートで専門か短大か」
と、医学部を目指すよりは納得している様子の先生。
それよりも私は早く病院に行きたいのに。
今日は日直だったから、なおさら彼を待たせてしまってる。
「ってことで!じゃあさようならっ」
「青石」
私はよく、呼び止められる。
できれば1度で済ませてほしいと思いながら、担任のそれまでとは変わった空気感に合わせた。
「…浅倉のことで、お前に聞いておきたいことがある」
「ぜんぶ知ってます。たぶん…先生よりも知ってます」
「……そうか。んなら、気をつけて早めに帰れよ」
はやく浅倉に会いに行ってやれ───先生までも、そう言ってくる。